2011年08月04日

預貯金の解約と相続放棄

 突然に父が死亡した。
 知合いから,早くお金を下さないと面倒になると言われたため,預貯金を解約した。
 ところが,その後になって,父がたくさんの借金を抱えていることが分かった。
 そこで,相続放棄をしようとしたのだが,銀行から,預貯金を解約してしまった後は,相続放棄はできないと言われてしまった。
  はたして,銀行の言うことは本当だろうか。

 多分,間違いである。
 以前のブログでも書いたが,「単純承認」といい相続放棄をする前に遺産の一部を処分すると、相続を承認したこととなり、以後、相続放棄ができなくなる(民法921条1号)。
 そして,預貯金の解約が「処分」にあたないとはいいきれず,それにより相続放棄できなくなる可能性はある。
 だから,預貯金を安易に解約しない方がよいのである。

 ところが,この点,意外に裁判所は優しいのである。
 大阪高等裁判所平成14年7月3日決定は,被相続人の死後,1000万円の預貯金を解約し,葬儀費や墓石の購入費として400万円ほどを使ってしまったという事案である。
 裁判所は,以下のように述べて,その事案で,相続放棄を認めた。
  葬儀は,人生最後の儀式として執り行われるものであり,社会的儀式として必要性が高いものである。
  相続財産があるにもかかわらず,これを使用することが許されず,相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば,むしろ非常識な結果といわざるを得ない。
  一家の中心である 夫ないし父親が死亡した場合に,その家に仏壇がなければこれを購入して死者をまつり,墓地があっても墓石がない場合にこれを建立して死者を弔うことも我が国の通常の慣例であり,預貯金等の被相続人の財産が残された場合で,相続債務があることが分からない場合に,遺族がこれを利用することも自然な行動である。
  よって,それらに使ったことは,「法定単純承認たる『相続財産の処分』(民法921条1号)に当たるとは断定できない」


 裁判所は,法律がどうこうよりも,「夫が死んだら葬儀費用と墓石代ぐらいその預金から出すのは常識だろ!」ということで相続放棄を認めているのだ。
 最高裁の判例ではないので,どこまで適用があるのかは怪しいところではある。
 しかし,1000万円を下して,400万円を使ってしまっても相続放棄が認められたのだから,少なくとも預貯金を解約しても,使ってしまっていなければ,相続放棄は認められるのだろう。

 いずれにしても,はっきりしてほしいところではあるのだが・・・。

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posted by 内田清隆 at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続
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