2010年09月17日

葬儀費用は遺産に入る?誰が負担するの?

 Aさんは300万円の財産を残して死亡した。相続人は長男と次男の二人である。長男が喪主となり200万円をかけて葬式を行った。

 長男は,葬儀費用は遺産から出すべきであり,300万円から200万円を引いた100万円を50万円ずつに遺産分割するべきだと主張した。
 一方,次男は,「自分は,こんな大きな葬式をしないでよいと思っていた」と言い出し,葬儀費用は長男が負担し,300万円を150万円ずつに遺産分割するべきだと主張した。
 
 さて,どちらが正しいのであろうか?
 
 答えは

  ・・・・分からない。
 まだ,決まっていないのだ。いつかは決まるであろうが,現在のところ,法律ははっきりせず,裁判例,学説とも厳しく対立している。
 
 葬儀費用を誰が負担すべきか?
   相続人間で分割して負担すべきだという説
   喪主が負担すべきだとする説
   遺産分割によって決せられるべきとする説
など考え方はさまざまだ。

 本来,葬儀費用は,遺産の範囲に含まれ,相続人全員が負担すべきものであろう。
 しかし,法律上,遺産とは被相続「人」が有していた財産だ。
 そして,法律上は「人」であるのは死亡時までだ。
 そうすると死亡後に発生した葬儀費用が遺産に含まれると考えるのは不自然である。
 そのため問題がややこしくなっているのだ。

 葬儀費用が結構な額になることは少なくない。
 遺産分割でもめる可能性がある場合には,
 葬儀費用は必ずしも相続人間で平等に負担されるものではない
ということだけは頭に入れておくべきであろう。

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posted by 内田清隆 at 18:38| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年08月08日

「お前なんて勘当だ!」は法律的には有効?

 「息子を勘当したいけど、どうしたらいい?」と相談を受けることが何度かあった。

 初めて相談を受けたときは戸惑った。
 「勘当」という法律制度があったのは戦前の話であり勉強をしたことがなかったためである。
 
 法律は戦後すぐに改正されたらしい。現在は法律的に「勘当」するのは不可能であり、実の親子の縁を切る方法はない。

 「勘当」に似た制度としては「廃除」という制度がある。これにより親子の縁は切れないが、実の子の相続分を完全に奪うことが可能である。
ところが以前に説明したが廃除は実に使いづらい制度だ。そのため子に相続させないためあの手この手が使われている。

 今でも、特に田舎の日本人の心の中に生きている「勘当」という制度、法律としてもあったらいいのではないだろうかと思うことも多い。

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posted by 内田清隆 at 13:51| Comment(1) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年08月02日

遺言で保険金受取人を愛人に変更できるか?

 愛人,つまり配偶者がいるにもかかわらず不倫関係にある相手方を保険金受取人にしたいと思っても,保険会社は,そのような契約を結ばせてはくれない。
 それでは遺言で愛人を保険金の受取人に変更することはできないであろうか?

 遺言により保険金受取人を変更できるのかという大きな問題があった。この点,法律はなかったが,判例により遺言による変更は認められていた。
 さらに,今年の4月から施行された新保険法により,それ以降に契約された保険については,遺言により保険金の受取人が変更できることが法律上も明確にされた。

 問題は遺言で保険金受取人を「愛人」に変更できるかである。

 第1の問題点は,公序良俗(民法90条)に反して,そのような受取人変更が無効にならないかである。
 いくつかの裁判例によると,愛人への保険金受取人の変更が有効になるかどうかは,2点の基準から判断される。
 
 第1の基準は,その変更が不倫関係の維持・継続と対価性を有するかである。
 例えば,愛人が知らない間にそっと遺言を書いたのであれば,不倫関係の維持と対価性を有さないので遺言は有効になる。
 一方,「愛人関係を続けていくなら遺言を書いて黒ハート」とお願いされてやむなく遺言を書いたのであれば,遺言と不倫関係維持に対価性があるから遺言は無効ということになる。

 第2の基準は,相続人の生活基盤が脅かされるものであるかである。
 例えば,全財産を保険契約に投資し,その受取人を不倫相手に変更する遺言を書いた場合,本妻がほかに遺産がなく生活に困るようであれば,遺言は無効とされる可能性が高くなる。

 第2の問題は,公序良俗に反しなくても,保険会社の意思に反するという点だ。
 例えば,東京地裁平成11年3月11日判決の例は,「戸籍上の配偶者がいるにもかかわらず内縁の妻を死亡保険金受取人に指定することはできません」とパンフレットに記載があったにもかかわらず,保険会社にウソの報告をして,愛人を保険金受取人にした例である。

 同判決は,結論的には,愛人を保険金受取人にする指定を有効と判断した。しかし,その理由は,当時の保険会社は,保険金詐欺などを防ぐために,妻がいる場合に内妻を保険金受取人にできないとしていたのであり,「妻がいる場合に、受取人を愛人とする生命保険契約を拒否すべしとの記載は全く窺えない。」というものであり,なんとも微妙な判断である。

 結局,保険会社の意思に反するという点はケースバイケースの判断になりそうである。
 ただ,結局は,この点も,社会的な相当性 −本妻がかわいそうか,愛人がかわいそうか− といった何ともいえない点で判断が決まりそうな気もする。

 「遺言で保険金受取人を愛人に変更できるか?」という質問の答えは,結論として「微妙」としかいいようがない。
 ただし,このような遺言をのこせば,将来もめる可能性は非常に高くなり,保険会社も裁判で負けないと保険金を支払わない可能性も高い。
 それを思うとこのような遺言は最終手段であり,安易に作成すべきでないことは確かであろう。

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posted by 内田清隆 at 07:44| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月17日

借金を相続しない方法4〜要注意の法定単純承認

 原則として,相続開始後3か月以内に相続放棄をすれば,借金を相続する必要はなくなる。しかし,例外となる法定単純承認には注意が必要だ。

 民法921条第1項によると,「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は,相続人は,単純承認したことになり,もはや,相続放棄できないことになる。

 そのため,例えば,相続放棄をする前に,被相続人の預貯金を解約したり,被相続人がのこした腕時計を誰かにあげたりした場合には,相続放棄ができなくなる可能性がある。

 相続が始まった時点には,被相続人がたくさんの借金を抱えているとは夢にも思っていなかった。そのため,深く考えずに被相続人の預貯金を解約して使ってしまった。その後,被相続人にたくさんの借金があることが分かった。そこで,急いで相続放棄をしようとしても,もう遅いというわけだ。
 使ってしまった預貯金を返還したとしてもだめである。相続財産の一部を処分してしまった場合には,取り返しはつかない。
 3か月の相続放棄できる期間内であっても,相続放棄ができなくなってしまうのだ。

 気をつけることとしては,相続が始まっても急がないということだろう。
 同居していない親族などの場合は借金があるかどうかはすぐに分からないことも多い。
 まずは,きちんと調査をして,借金がなさそうだということが分かってから,相続財産の処分を進めればいい。相続放棄できる期間は3か月。そう思うと49日が終るころまでは,あわてて相続財産を処分したりする必要もないだろう。

 貸していたお金を返してもらい預かっただけでも相続放棄できないのか,形見分けとして大して価値のない衣類を近親者に贈与しただけでも相続放棄できないのかなど裁判例で争われている。
 価値の少ないものなら「処分」にならない,社会常識の範囲内で葬式費用に使った分ならよいとする裁判例もあるが,どんなに少額でも,相続放棄できなくなる可能性がある。

 批判も強いが,親の残した恐らく大した価値もない衣類を形見分けした場合には,相続放棄できなくなるとした大審院の判例もある。
 そして,相続放棄ができないことによる損害は,何億円になるかもしれない。
 くれぐれも注意が必要だ。
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2010年07月13日

借金を相続しない方法3〜熟慮期間経過後の相続放棄

 相続放棄をすれば借金を相続しなくてもよくなる。しかし,相続放棄は相続開始後3か月以内にしなければいけない。
 3か月がたってしまうと,もう相続放棄をしたくてもできなくなる。それが原則である。

 その3か月は,「熟慮期間」と呼ばれるが,3か月は意外に短く「熟慮」している時間は余りない。
 葬儀や49日の法要等でバタバタしていると,3か月は,あっという間にたってしまう。

 ところが,3か月たってから,多額の借金を相続してしまっていることが判明することは良くあるのだ。というのも,貸金業者は,わざと3か月が過ぎるのを待ってから支払を催促したりするからである。
 このような場合でも相続放棄はできないのであろうか?

 最高裁の判例は,非常に厳しい。
 最高裁は,@相続財産が全く存在しないと信じていたことAそう信ずるについて相当な理由がある場合に限って,熟慮期間経過後の相続放棄を有効とする。
 文言どおりに解釈すれば,まず,借金があることを知らなくても,現金や預貯金などの相続財産が存在することを知っていれば,熟慮期間経過後は相続放棄はできないことになる。
 しかも,相続財産が全く存在しないと信じる相当な理由というものは,厳密に考えればない場合がほとんどである。
 そのため,最高裁の判例を文字どおりに考えると熟慮期間経過後に相続放棄できるのは極めて例外的な場合ということになる。

 ところが,実際には,最高裁の判例以降も,熟慮期間を緩やかに考える裁判例は,たくさん存在している。
 最高裁の判例どおりに判断すれば認められないような熟慮期間経過後の相続放棄が認められているケースも多いのだ。

 また,そもそもとして,多くの家庭裁判所では,きちんとした調査をしないで熟慮期間経過後の相続放棄を受理している,
 相続放棄を家庭裁判所が受理したとしても,法的には,ほとんど意味がない。債権者は,相続放棄の無効を主張して,貸金の返還を求める民事訴訟を提起することができるためだ。
 そのため,家庭裁判所としては,相続放棄の有効性に関する争いに関しては民事訴訟にまかせて,明らかに要件がない場合を除いて幅広く相続放棄を受理する傾向にあるのだ。
 
 「熟慮期間経過に債務超過が発覚したと相続人が主張する場合には,原則として熟慮期間経過後であっても相続放棄を受理すべきである」と裁判官も雑誌に記事を書いている(判例タイムス・1019号53頁)。
 この通りであれば,熟慮期間経過後に借金があることを知った場合には,常に相続放棄の受理自体はされるということになる。

 自分の経験からいっても,「要件が足りないかなあ」と思われる熟慮期間経過後の相続放棄も受理されている。
 そこで,熟慮期間が経過していてもあきらめずに,まずは相続放棄の申述を家庭裁判所にすべきである。
 有効かどうかはともかく,多くは受理される。そして,受理されてしまえば,債権者がそれ以上何も言わなくなる場合も少なくはないからである。
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posted by 内田清隆 at 06:22| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月06日

借金を相続しない方法2 限定承認

  限定承認を使いづらくさせている理由の一つは,相続人全員で申立をする必要があるということだ。
  相続人間で意見の対立があったり,連絡が取れなくなっている相続人がいたりすると限定承認は利用できない。
  これは結構大きな問題である。限定承認を検討するような場合には,相続人間で色々ともめ事が起こっている場合も少なくない。しかし,相続人が意見を一つにしないと限定承認は利用できないのである。

 もう一つ限定承認の問題点は,費用と時間がかかるという点である。限定承認の手続きはけっこうややこしい。具体的には以下の通りである。

1 まず,相続人全員で家庭裁判所に限定承認申述申立をする。

2 限定承認者等は,限定承認をしたこと及び債権届出をするよう分かっている債権者等に通知し,さらに官報に公告をする。

3  一方で,限定承認者は,現金以外のすべての相続財産を競売又は家庭裁判所が選んだ鑑定人の評価に従い売却したりすることにより,現金化する。

4 その後,債権申出期間が満了した後、その現金の中から、債権者に対し、全額支払可能であれば全額を,全額の支払が不可能であれば,債権額の割合に応じて弁済をする。

 
 すべて終了させるまでに期間は最低でも1年程度はかかるし,事案が複雑であればそれ以上かかることも珍しくない。
 また,これらの手続きを弁護士に委任しないで行うのは困難であり,弁護士に委任した場合の弁護士費用などの諸費用も相当に必要になる(ケースバイケースだが最低でも50万,通常100万円以上だろう)。

 このように限定承認は時間と費用がかかる点でも使いづらい。もう少し簡易・迅速に進められるよう法改正が必要であろう。

 しかし,それでも,相続人全員の意見が一致するのであれば限定承認は積極的に利用すべき制度であると思う。
 万が一であっても多額の借金を相続することになってしまえば悲劇である。それは5年後に来るのかもしれないし,10年後に来るのかもしれない。一生,多額の借金の相続の可能性はついてまわる。そのような可能性があると思いながら一生を過ごすのは不安なものである。
 一方で限定承認をしてしまえば,そのときは,費用もかかるし面倒であっても,それ以降借金を相続する可能性については,一切心配しないでよいのだ。

 相続放棄をするならともかく,借金は心配だけど,後から請求がきたらそのときまた考えようという安易な考えで相続するのであれば,積極的に限定承認の利用を考えるべきである。
 もちろん本来であれば,生前に借金がないか本人にきちんと確認しておければ一番良いのだが・・・。
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posted by 内田清隆 at 10:25| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月04日

借金を相続しない方法1  

「親が亡くなったが,親に借金があるかもしれないので心配だ。どうしたらいい?」
 という相談を受ける場合は多い。
 特に問題となるのは,例えば親とほとんど交流がなく,親に借金があるのかどうか,よく分からないという場合だ。

 てっとりばやい方法は,相続放棄である。借金があるかどうかを調べなくても,相続放棄はできる。これをしてしまえば,後からどんなに借金が発見されても安心である。

 しかし,問題となるのは,相続放棄した場合には,借金も相続しないが,財産も相続できなくなるという点である。
 財産がなく,借金だけが問題となるのであれば相続放棄をすればよく,話は単純だ。
 しかし,財産があるにもかかわらず,借金が「あるかもしれない」という場合,どうすればよいかは非常に難しい。

 借金があると思われる金融機関に照会すれば,その金融機関における情報について回答を得ることはできる。
 弁護士会照会といった調査手続きを使えば,相当程度には,借金があるかどうかは予測できるだろう。
 しかし,残念ながら完全に調べる方法はない。友人の多額の借金の保証人になっていないかどうかなどは,調べるのは非常に困難だ。

 そのような場合に備えて,「限定承認」と呼ばれる手続きがある。
 限定承認をすれば,相続財産の額の限度で責任を負うことになる。
 つまり,相続財産ですべての借金を弁済できなければ,何の責任も負わないことになり,すべての借金を弁済できれば,残りを相続することになる。

 「そんな良い制度があるならば,何の心配もないなあ」と最初に相続の法律を勉強したときに思った。
 ところが,この「限定承認」という制度は意外と使いづらく,余り使われていないのである。
 そのあたり,次回詳しく説明しよう。
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posted by 内田清隆 at 12:59| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月01日

遺留分を奪う方法3−生前贈与

 遺留分を奪う方法として、
養子縁組 http://uchidasouzoku.sblo.jp/article/38478205.html
廃除 http://uchidasouzoku.sblo.jp/article/38645705.html
を紹介したが,手続きが一番簡単なのは生前贈与の方法である。

 要するに,生前に全財産を相続させたい相続人らに贈与してしまうのである。
 そうすれば、遺留分を奪いたい相続人,つまり1円たりとも相続させたくない相続人は、相続をしたくても、相続ができなくなる。

 そんな簡単に遺留分を奪えるの?と思うかもしれない。
 実は,この方法で遺留分を奪うことは,本来はできない。

 というのも,相続人に対する生前贈与(特別受益)は,遺留分算定の基礎となる財産に加えられてしまうからだ。
 そのため,相続人として子ABの2人がいた場合,
@Aに全財産1億円を相続させるという遺言を書いてBの遺留分を奪っても
AAに1億円を生前贈与しBの遺留分を奪っても,
不当に遺留分を侵害したとして,BはAに2500万円分の遺留分減殺請求をできることに変わりはないのだ。

 しかし,違いが二つある。

 一つは,生前贈与したかどうかは,もう一人の相続人には簡単には分からないということだ。
 相続人の一人に贈与したからといって,他の相続人にそれを伝えなければいけない義務はない。
 そうなると,土地などの分かりやすいものでなければ,実際には,その贈与の内容は,贈与を受けていない相続人は知りようがなくなるということも十分に考えられる。
 そうなれば,遺留分を侵害された者は,侵害されたことを証明することができなくなる。その結果,実際問題として,遺留分減殺請求はできなくなってしまうというわけだ。
(違法ではないが脱法的ではあるので,その点の注意がいる。)

 もう一つは,生前贈与した物は,遺留分算定にあたり相続時の時価で評価されるという点だ。
 例えば,2000万円の土地を生前贈与したところ,相続時に1億円にその土地の価格が上昇していたとしよう。その場合,遺留分算定にあたりその土地は1億円で計算されることになる。
 したがって,その場合には,多額の贈与をしたことになり,多額の遺留分減殺請求を受けることになる。

 一方で2000万円の絵画を生前贈与したとしても,相続時に100万円の価値になってしまっていれば,遺留分減殺請求を受けないということにもなりうる。

 相続時に何の値段が上がり,何の値段が下がるかは一般には予想できない。
 しかし,同族会社の株式など値段がコントロール可能なの物を用いて,生前贈与により,事実上遺留分を多く奪うことも可能になるであろう。


 また,贈与とは,少し異なるが,保険を利用する方法もある。全財産を保険に掛けてしまい,受取人を相続させたい相続人だけにしておくのだ。
 そうすれば,相続させたくない相続人は何も相続できなくなり,遺留分を奪ったのと同じ結果になる。
 保険金を受け取ることは,贈与(特別受益)には,原則ならないとされているため,この方法も有用だ。
(もっとも,最高裁の判例からすれば,金額によっては,遺留分減殺請求の対象になるので,絶対の方法ではない。)

 なお,いずれの方法であっても,贈与税や相続税も複雑に絡み合うので,注意が必要であることを忘れてはならない。
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posted by 内田清隆 at 08:12| Comment(1) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年05月29日

使いづらい廃除-遺留分を奪う方法2

 先日,遺留分を奪う裏技としての養子縁組を紹介した。

 遺留分を奪う方法として,そのような裏技以外に,法律にきちんと決められている方法がある。それが「廃除」である。

 相続人に「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」があった場合には,被相続人は「廃除」の請求を家庭裁判所にすることができる。そして,家庭裁判所が「廃除」の審判をすると,その相続人は,遺留分を完全に奪われ,まったく相続ができなくなるのである。

 例えば,親が次男から虐待を受けている場合でも,原則,長男に全財産を相続させることはできない。次男には,遺留分があるので,4分の1は相続させなければならないのだ,
 しかし,次男を「廃除」してしまえば,長男に全財産を相続させることが可能になるわけだ。


 相続欠格と異なり,不合理な制度ということはない。しかし,非常に使いづらい制度ではある。


 まず,相続欠格と同じ問題として,代襲相続がある。上記の例で,次男に子どもがいたとしよう。その場合に次男を廃除した場合には,次男には相続する権利は完全になくなる。  
 しかし,次男の子どもは,代襲相続により次男が持っていた遺留分を引き継ぐことになるのだ。したがって,次男の子どもに,4分の1を相続させなければならないのだ。これでは,次男を廃除する意味がない場合も少なくない。

 次の問題が,廃除請求のしづらさである。

 廃除請求を家庭裁判所にすると,家庭裁判所で,例えば,「虐待」があったかどうかにつき,関係者の事情聴取が行われ,関係書面が証拠として取り調べられ,裁判が行われる。
 遺留分を奪われる側も,奪われまいと一生懸命反論するのが一般的であり,その裁判は,大変なものになる。

 しかも,家庭裁判所の判断は厳しい。どの程度なら「虐待」等になるかは,ケースバイケースであるが,家庭裁判所は,なかなか「虐待」と認めてはくれない。そのため廃除を請求しても,認められないケースもたくさんある。

 虐待をしている子どもに対する裁判を起こすこと自体精神的に大きな負担である。しかも,その裁判が勝てるかどうか分からない大変な裁判であるとすれば,そんな裁判を起こすること自体,なかなかできるものではない。


 遺言により廃除を請求する方法もある。自分が生きている間に子どもに裁判をするのは精神的に大変だが,遺言による廃除ならばそのような問題はない。
 しかし,遺言による廃除には,別の大きな問題がある。それは,「本人が死亡していて,反論できない」ということだ。
 
 遺言による廃除の場合であっても,きちんとした裁判が行われる。その裁判で,虐待をしていた側は,「自分は,虐待はしていない。証拠にこのようなものがある」と主張するであろう。
 ところが,それに対して,反論をすべき本人が死亡しており,効果的な反論ができないのだ。そのような状況では,廃除を認めてもらうのは困難だ。


 つらいことがたくさんあり,悩みに悩んだすえに,「わが子にまったく相続させない」と決心するのが普通だ。その重い決心をもう少し尊重してもよいのではないだろうか?

 遺留分を奪う他の方法については,別の機会に説明していこう。

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2010年05月24日

遺留分を減らすための養子縁組

 特定の者の遺留分を減らすためになされた養子縁組は有効であろうか?

 A氏には太郎と花子の二人の相続人がいる。A氏は太郎には全く財産を相続させたくなく,花子に全財産を相続させたいと考えていたとしよう。
 その場合,問題になるのが遺留分である。全財産を花子に相続させるという遺言を作成しても,太郎には遺留分が認められており,全財産の4分の1を相続する権利があるのである。
 子供については,その相続分の2分の1が遺留分となる。太郎の相続分は花子と同じ2分の1,したがって,遺留分は2分の1×2分の1=4分の1になるというわけだ。

 そこで考えられるのが,養子縁組である。A氏が花子の夫及びその子(つまり孫)2名の3名と養子縁組を結んだらどうなるであろうか。そうすると,A氏の子は5人になり,太郎の遺留分は5分の1×2分の1=10分の1まで減らすことができる。
 このような養子縁組は有効なのであろうか?

判例は分かれておりケースバイケースだ。
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/123456789/8593/1/No80p060.pdf
 多くの判例は,「精神的なつながりをつくる意思」があるのであれば,特定の人の相続分を害する意図があっても養子縁組は有効であるとする。一方で,「専ら」他の相続人の遺留分を減らす意図でなされた養子縁組はその効力を否定すべきとされている。
 問題は,どのような場合,「精神的なつながりをつくる意思」が認められるかであるが,「精神的なつながりをつくる意思」などという目に見えないものを証明することは非常に困難だ。
 防御策としては,
  養子縁組した者にも一定程度相続させる,
  養子との間で相互扶助の約束など精神的なつながりを作る意図を書面にしておく
  同居をしてお父さんと呼ばせる
  姓を変更させる
など色々考えられるが,どうすれば,大丈夫というのは決まっていない。
 いずれにせよ太郎は,A氏が亡くなって初めて,花子のほかに3人も兄弟ができていることを知るのである。もめるのは必至,結構リスキーな方法である。

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posted by 内田清隆 at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年05月23日

相続でどれだけ遺産がもらえるの?その3−例外A寄与分と特別受益

 子供二人が相続人であれば遺言がなければ相続分は2分の1ずつ、それが原則である。

 しかし、長男は親の事業を給料ももらわずに支え続け親の事業を成功させるのに大きく貢献した。一方、次男は独立資金として結婚にあたり二千万円を親から出してもらい、ろくな親孝行は全くしなかった。
 こんな兄弟の相続分が同じでは納得できないだろう。そんなときに出てくるのが「特別受益」と「寄与分」だ。

 上の長男のように相続財産を増やすことに努力し寄与した者は、その分基本の相続分より多くの相続が認められる。それが寄与分である。
一方、上の次男のように、相続する親から生前、特別な利益を得ていた者は、その分基本の相続分より少ない相続しか認められない、それが特別受益である。

 寄与分や特別受益については、その範囲、どう金銭的に評価するのか、両者の関係など法律にきちんと定めがなく、判例もはっきりしないことがたくさんある。しかし、重要なことは細かいところではなく、遺言がなくても公平の観点から相続財産を増やしたことや減らしたことは評価され、基本は修正されるということだ。

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2010年05月22日

相続でどれだけ遺産がもらえるの?その2−例外 非嫡出子・放棄等

前回http://uchidasouzoku.sblo.jp/article/38382143.html説明した相続分に関する基本の例外としては, 
 「寄与分」 
 「特別受益」 
 「非嫡出子の相続分」 
 「相続放棄・欠格・廃除」
などがある。重要な「寄与分」と「特別受益」については,次回以降に説明するとして,その他の例外を説明しよう。

 前回,子供間,親間,兄弟間の相続分は平等であると説明した。しかし,唯一の例外として非嫡出子(きちんと結婚していないでできた子)がある。非嫡出子の相続分は,嫡出子(きちんと結婚してできた子)の相続分の半分である(なお,憲法の定める平等原則違反であるとの指摘も強く近く法改正になりそうだ。)

 ほかに基本の例外として,本来は相続人であるにもかかわらず相続人としての地位から外れる「放棄」「廃除」「欠格」がある。
 よくあるのは相続放棄だ。本来は相続人は奥さんと子ども二人だとしても,子どもの一人が「自分は相続しません」という相続放棄を家庭裁判所にすると相続人としての地位から外れる。その結果,奥さんと子ども一人だけが相続人となり,4分の1であった子どもの相続分は,2分の1となるのである。
 それ以外にめったにないが,相続人としての地位から外れる場合として,親を虐待した場合にありうる「廃除」や,親を殺した場合にありうる「欠格」がある。

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2010年05月21日

相続でどれだけ遺産がもらえるの?その1−基本

 相続で相続人が取得できる遺産の額は,遺言があれば遺言によって定められる。遺言がない場合には話合いで決まる。法律上,様々な規則があるが,ともかく原則は遺言又は話合いで決まるということが忘れられがちである。法律の規定は,遺言がなく,話合いもつかない特殊なケースにおいて適用されるのである。

 さて,その場合に適用となる民法の規定であるが,概要を説明すると以下の通りである。(被相続人とは亡くなられた人,子,配偶者などは被相続人から見ての呼び方である。)

1 子供がいる場合
  配偶者がいれば,配偶者が2分の1,子供が2分の1,配偶者がいなければ子供だけが相続する。

2 子供がいないで,配偶者もいない場合
  親がいれば親だけが相続人,親がいなくて兄弟がいれば兄弟だけが相続人となる。

3 子どもがいないで配偶者がいる場合
 親がいる場合は,配偶者が3分の2,親が3分の1を
 親がいない場合は,配偶者が4分の3,兄弟が4分の1
を相続する。
 なお,子供間,親間,兄弟間の相続分は平等であり,また,相続人となるべき子又は兄弟が被相続人死亡時に既に死亡している場合は,その子が代襲相続することになる。
 
 以上が,基本である。

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2010年05月15日

どのような場合に遺言を作成すべきですか?

 どのような場合,遺言を作成した方がいいのでしょうか?
 きちんとした遺言書を作成している人は,非常に少ないのが実情ですが,すべての人がぜひとも遺言書を作成すべきだと思います。
 遺言書がないばかりに,相続人たちが何年も不毛な遺産争いを行っているケースは非常に多くあります。後世のために遺言書を作成しておくことは義務ともいうべきです。
 「そんな大げさに考えるほど財産もないし・・」と思われるかもしれません。しかし,多額の遺産でなくても,深刻な遺産争いになるケースは少なくありません。簡単な遺言書一枚あればそれが避けれるのです。 
 「自分の子どもたちは,そんな争うことはしないし・・・」と思われるかもしれません。しかし,子どもたちにとっても,争わないにしても,すべて親が決めてくれていれば,その方が楽ですし,安心もできます。何よりも,仲が良かった兄弟が,遺産を巡って,絶交状態になるケースが少なくないことを忘れてはいけません。一枚の遺言書があれば,それが避けれるのです。
 特に事業承継をお考えの方は,遺言書作っておかないともめることは必須です。
 また,子供以外が相続するときなど,もめる要素があるときにも,遺言書の作成が必須です。
 いずれにせよ,遺言書の作成は難しくありません。後世のための義務であると考え,早めに作成しておきましょう。
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posted by 内田清隆 at 12:27| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続