2010年08月19日

隠居による家督相続は廃止されています 

 初めて戸籍に「隠居」(いんきょ)と書かれているのを見て驚いたことがある。
 
 「隠居」は,戦前までは立派な法律用語だったのだ。
 生前に全財産を長男などに相続させて戸主の地位も譲ってしまうこと,つまり家督相続を行い隠退することを「隠居」と呼んでいた。

 実は,この隠居による家督相続という制度,日本人の心の中では結構生き続けている。
 というのも,色々な人から,「そろそろ隠居して,長男に家督を相続させたいんだけどどうしたらいいかなあ」と相談されたことがあるからだ。
 
 実は,これが意外と大変である。
 法的な隠居制度が廃止された現在,生前に,長男に財産を相続させるには「生前贈与」によるしかない。
 しかし,その場合,多額の贈与税を支払わなくてはならない場合がある。
 また,次男や三男にも「遺留分」があるため,全財産を長男に相続させてしまうわけにもいかず,遺留分を計算しながら手続きを進めていかないといけないからだ。

 ある居酒屋で近くに座った中小企業の会長さんが「既に長男に家督相続をさせているから,老後は安心だ。」と話されるのを聞いた。
 「それは良かったですね〜」などと詳しい話を聞いてみると,その会長さんは,いまだに隠居による家督相続という制度があり,自分が隠居して全財産を長男に譲ったと家族の前で言えば,それで手続きは終了したと思っていた。
 どうも,その会長さんの家族も同じように思っているようであった。
 ついつい弁護士として黙っておられず,隠居による家督相続という制度は廃止されているなどと説明してしまったが,恐らくは,法律が出てくることもなく,長男が問題なく相続するのであろうと思わされた。

 法律は法律としてあるが,そんなものを無視して隠居による家督相続という制度は生き残っていると痛感させられた。

ただ怖いのは,そのような人たちの間であっても,いざもめた場合には現在の法律が適用されるということだ。
 その矛盾によって大きなトラブルが発生しないことを祈りたい。


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posted by 内田清隆 at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 取扱事例から

2010年08月13日

しっかり者の次男は「争族」のタネ

 石川県特有の話であろうか?

 私が経験した,遺産分割がもめたという案件では,「しっかり者の次男」が家を守ってきたというパターンが非常に多い。
 へたをすると半分近くがそのパターンかもしれない。

 長男は,ある程度の年齢で家を出ていってしまい,自由気ままに生活を送ってきた。
 一方の次男は,親と同居して,親の家業を支えて生活をしてきた。
 そのようなケースにおいて親が亡くなったときに遺産分割でもめる,いわゆる「争族」となるケースが非常に多いのだ。

 長男が親と同居し,親の家業を手伝ってきた場合には,長男が,親の家や財産の多くを相続する場合が多いであろう。
 そうなったとしても,他の兄弟が文句を言う場合は少なく,遺産分割でもめることは余りない。

 ところが,長男が家を出ていて,しっかり者の次男が家を守ってきた場合は事情が違う。
 そのような場合には,次男は,「長男は何もしていない,自分が跡取りだ!」として,親の家や財産を相続しようする。
 一方の長男は,「長男の自分を無視するな!」として,きちんと相続しようとする。
 他の兄弟も長男についたり,次男についたりして,もめるというパターンが非常に多いのだ。

 石川県では戦前の家父長制の意識が強く残っているからなのかもしれない。
 いずれにせよ,しっかり者の次男が家を継いでいる場合は相続でもめる可能性が高いのは確かだ。
 親としては,きちんとした遺言を作成しておかないと,相続でもめる可能性が高いことを考えておく必要があるだろう。

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posted by 内田清隆 at 17:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 取扱事例から

2010年08月08日

「お前なんて勘当だ!」は法律的には有効?

 「息子を勘当したいけど、どうしたらいい?」と相談を受けることが何度かあった。

 初めて相談を受けたときは戸惑った。
 「勘当」という法律制度があったのは戦前の話であり勉強をしたことがなかったためである。
 
 法律は戦後すぐに改正されたらしい。現在は法律的に「勘当」するのは不可能であり、実の親子の縁を切る方法はない。

 「勘当」に似た制度としては「廃除」という制度がある。これにより親子の縁は切れないが、実の子の相続分を完全に奪うことが可能である。
ところが以前に説明したが廃除は実に使いづらい制度だ。そのため子に相続させないためあの手この手が使われている。

 今でも、特に田舎の日本人の心の中に生きている「勘当」という制度、法律としてもあったらいいのではないだろうかと思うことも多い。

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posted by 内田清隆 at 13:51| Comment(1) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年08月02日

遺言で保険金受取人を愛人に変更できるか?

 愛人,つまり配偶者がいるにもかかわらず不倫関係にある相手方を保険金受取人にしたいと思っても,保険会社は,そのような契約を結ばせてはくれない。
 それでは遺言で愛人を保険金の受取人に変更することはできないであろうか?

 遺言により保険金受取人を変更できるのかという大きな問題があった。この点,法律はなかったが,判例により遺言による変更は認められていた。
 さらに,今年の4月から施行された新保険法により,それ以降に契約された保険については,遺言により保険金の受取人が変更できることが法律上も明確にされた。

 問題は遺言で保険金受取人を「愛人」に変更できるかである。

 第1の問題点は,公序良俗(民法90条)に反して,そのような受取人変更が無効にならないかである。
 いくつかの裁判例によると,愛人への保険金受取人の変更が有効になるかどうかは,2点の基準から判断される。
 
 第1の基準は,その変更が不倫関係の維持・継続と対価性を有するかである。
 例えば,愛人が知らない間にそっと遺言を書いたのであれば,不倫関係の維持と対価性を有さないので遺言は有効になる。
 一方,「愛人関係を続けていくなら遺言を書いて黒ハート」とお願いされてやむなく遺言を書いたのであれば,遺言と不倫関係維持に対価性があるから遺言は無効ということになる。

 第2の基準は,相続人の生活基盤が脅かされるものであるかである。
 例えば,全財産を保険契約に投資し,その受取人を不倫相手に変更する遺言を書いた場合,本妻がほかに遺産がなく生活に困るようであれば,遺言は無効とされる可能性が高くなる。

 第2の問題は,公序良俗に反しなくても,保険会社の意思に反するという点だ。
 例えば,東京地裁平成11年3月11日判決の例は,「戸籍上の配偶者がいるにもかかわらず内縁の妻を死亡保険金受取人に指定することはできません」とパンフレットに記載があったにもかかわらず,保険会社にウソの報告をして,愛人を保険金受取人にした例である。

 同判決は,結論的には,愛人を保険金受取人にする指定を有効と判断した。しかし,その理由は,当時の保険会社は,保険金詐欺などを防ぐために,妻がいる場合に内妻を保険金受取人にできないとしていたのであり,「妻がいる場合に、受取人を愛人とする生命保険契約を拒否すべしとの記載は全く窺えない。」というものであり,なんとも微妙な判断である。

 結局,保険会社の意思に反するという点はケースバイケースの判断になりそうである。
 ただ,結局は,この点も,社会的な相当性 −本妻がかわいそうか,愛人がかわいそうか− といった何ともいえない点で判断が決まりそうな気もする。

 「遺言で保険金受取人を愛人に変更できるか?」という質問の答えは,結論として「微妙」としかいいようがない。
 ただし,このような遺言をのこせば,将来もめる可能性は非常に高くなり,保険会社も裁判で負けないと保険金を支払わない可能性も高い。
 それを思うとこのような遺言は最終手段であり,安易に作成すべきでないことは確かであろう。

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posted by 内田清隆 at 07:44| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月23日

終らない相続紛争〜遺言作成の重要性

 相続紛争の最長記録はいったい何年であろう。10年以上続いているケースは少なくないはずである。
 途中から関わった事件であるが,「いつか終わりが来るのだろうか?」と絶望的な気持ちになっている事件がある。

 母親に続いて父親が亡くなり,3人の男兄弟で,遺産分割をめぐって家庭裁判所で調停が開かれていた。
 争点も多く,相続財産も莫大であったため,調停に時間がかかることは最初から予想された。
 
 1年ぐらい調停が続いた後で,父親の親,つまり祖父の相続が問題となった。
 祖父の預貯金を長男がおろし受け取ったようなのだが,本来その預貯金は,父親の相続財産であり,今回の調停で遺産分割の対象になるという主張がなされたのである。
 祖父のもっていた預貯金を長男が不当に受け取ったかどうかは,父親の遺産分割調停とは別個の問題である。
 そのため,一度調停を中断し,それについて,別に通常の民事訴訟として,地方裁判所で争われることになった。
 地方裁判所では長男が勝訴したが,控訴審である高等裁判所では長男は逆転敗訴した。
 結局3年以上かかって,最高裁まで争われ,長男の敗訴が確定した。

 それにより事件は再び家庭裁判所に戻され,長男がおろした祖父名義の預貯金も相続財産であるという前提で調停が復活されるはずであった。
 ところが,祖父には,父親以外にも兄弟がいた。
 その兄弟は亡くなられていたため,その兄弟の子3名が上記裁判を知り,長男に対して,自分にも遺産として分け前をよこすよう請求してきたのだ。
 そこで,その問題が解決するまで,再び調停は中断された。結局,それについては,話合いで解決するにいたったが,話合いには1年以上も時間がかかった。

 既に,相続開始後,5年以上が経過し,ようやく調停が再開された。

 そのときである。

 長男が突然,病気で急死してしまった。
 しかも,長男には4人の子がいたのだが,1人は愛人の子であり,どこにいるのかも分からないという厄介な問題があった。
 そこで,色々と努力してその子の所在を探したが結局見つからなかった。そのため,利害関係のない弁護士が不在者財産管理人として選任されることになり,その管理人が愛人の子の代理人として遺産分割に加わることになった。

 事件は混迷を続ける
 その愛人の子を探す手続きに時間をかけている間に,長男の子らの間でけんかが始まってしまい,その間でも遺産分割をめぐる調停が始まってしまったのだ。

 更に問題が起こる。
 そうこうしている間に,三男が入院してしまったのだ。
 三男は弁護士をつけずに,調停に参加していたため,本人が出席しないと調停が進まない。
 しかも,三男は重い病気で,三男が亡くなられると,その相続人もまた3名いる・・・・。

 既に,相続開始から10年以上が経過してしまっている。
にもかかわらず,いまだ解決の気配さえ全くない。

 教訓  
 少しでも資産を持っている人は必ず遺言を作れ!
 そうしないと相続人は大変なことになる!


 遺言さえ作成していれば,10年以上も続くこの厄介な紛争は生じなかっただろう。遺言を作成しなかった落ち度は大きい。

【事例は,個人特定防止のためデフォルメされています】
 
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posted by 内田清隆 at 08:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 取扱事例から

2010年07月17日

借金を相続しない方法4〜要注意の法定単純承認

 原則として,相続開始後3か月以内に相続放棄をすれば,借金を相続する必要はなくなる。しかし,例外となる法定単純承認には注意が必要だ。

 民法921条第1項によると,「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は,相続人は,単純承認したことになり,もはや,相続放棄できないことになる。

 そのため,例えば,相続放棄をする前に,被相続人の預貯金を解約したり,被相続人がのこした腕時計を誰かにあげたりした場合には,相続放棄ができなくなる可能性がある。

 相続が始まった時点には,被相続人がたくさんの借金を抱えているとは夢にも思っていなかった。そのため,深く考えずに被相続人の預貯金を解約して使ってしまった。その後,被相続人にたくさんの借金があることが分かった。そこで,急いで相続放棄をしようとしても,もう遅いというわけだ。
 使ってしまった預貯金を返還したとしてもだめである。相続財産の一部を処分してしまった場合には,取り返しはつかない。
 3か月の相続放棄できる期間内であっても,相続放棄ができなくなってしまうのだ。

 気をつけることとしては,相続が始まっても急がないということだろう。
 同居していない親族などの場合は借金があるかどうかはすぐに分からないことも多い。
 まずは,きちんと調査をして,借金がなさそうだということが分かってから,相続財産の処分を進めればいい。相続放棄できる期間は3か月。そう思うと49日が終るころまでは,あわてて相続財産を処分したりする必要もないだろう。

 貸していたお金を返してもらい預かっただけでも相続放棄できないのか,形見分けとして大して価値のない衣類を近親者に贈与しただけでも相続放棄できないのかなど裁判例で争われている。
 価値の少ないものなら「処分」にならない,社会常識の範囲内で葬式費用に使った分ならよいとする裁判例もあるが,どんなに少額でも,相続放棄できなくなる可能性がある。

 批判も強いが,親の残した恐らく大した価値もない衣類を形見分けした場合には,相続放棄できなくなるとした大審院の判例もある。
 そして,相続放棄ができないことによる損害は,何億円になるかもしれない。
 くれぐれも注意が必要だ。
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2010年07月13日

借金を相続しない方法3〜熟慮期間経過後の相続放棄

 相続放棄をすれば借金を相続しなくてもよくなる。しかし,相続放棄は相続開始後3か月以内にしなければいけない。
 3か月がたってしまうと,もう相続放棄をしたくてもできなくなる。それが原則である。

 その3か月は,「熟慮期間」と呼ばれるが,3か月は意外に短く「熟慮」している時間は余りない。
 葬儀や49日の法要等でバタバタしていると,3か月は,あっという間にたってしまう。

 ところが,3か月たってから,多額の借金を相続してしまっていることが判明することは良くあるのだ。というのも,貸金業者は,わざと3か月が過ぎるのを待ってから支払を催促したりするからである。
 このような場合でも相続放棄はできないのであろうか?

 最高裁の判例は,非常に厳しい。
 最高裁は,@相続財産が全く存在しないと信じていたことAそう信ずるについて相当な理由がある場合に限って,熟慮期間経過後の相続放棄を有効とする。
 文言どおりに解釈すれば,まず,借金があることを知らなくても,現金や預貯金などの相続財産が存在することを知っていれば,熟慮期間経過後は相続放棄はできないことになる。
 しかも,相続財産が全く存在しないと信じる相当な理由というものは,厳密に考えればない場合がほとんどである。
 そのため,最高裁の判例を文字どおりに考えると熟慮期間経過後に相続放棄できるのは極めて例外的な場合ということになる。

 ところが,実際には,最高裁の判例以降も,熟慮期間を緩やかに考える裁判例は,たくさん存在している。
 最高裁の判例どおりに判断すれば認められないような熟慮期間経過後の相続放棄が認められているケースも多いのだ。

 また,そもそもとして,多くの家庭裁判所では,きちんとした調査をしないで熟慮期間経過後の相続放棄を受理している,
 相続放棄を家庭裁判所が受理したとしても,法的には,ほとんど意味がない。債権者は,相続放棄の無効を主張して,貸金の返還を求める民事訴訟を提起することができるためだ。
 そのため,家庭裁判所としては,相続放棄の有効性に関する争いに関しては民事訴訟にまかせて,明らかに要件がない場合を除いて幅広く相続放棄を受理する傾向にあるのだ。
 
 「熟慮期間経過に債務超過が発覚したと相続人が主張する場合には,原則として熟慮期間経過後であっても相続放棄を受理すべきである」と裁判官も雑誌に記事を書いている(判例タイムス・1019号53頁)。
 この通りであれば,熟慮期間経過後に借金があることを知った場合には,常に相続放棄の受理自体はされるということになる。

 自分の経験からいっても,「要件が足りないかなあ」と思われる熟慮期間経過後の相続放棄も受理されている。
 そこで,熟慮期間が経過していてもあきらめずに,まずは相続放棄の申述を家庭裁判所にすべきである。
 有効かどうかはともかく,多くは受理される。そして,受理されてしまえば,債権者がそれ以上何も言わなくなる場合も少なくはないからである。
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posted by 内田清隆 at 06:22| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月06日

借金を相続しない方法2 限定承認

  限定承認を使いづらくさせている理由の一つは,相続人全員で申立をする必要があるということだ。
  相続人間で意見の対立があったり,連絡が取れなくなっている相続人がいたりすると限定承認は利用できない。
  これは結構大きな問題である。限定承認を検討するような場合には,相続人間で色々ともめ事が起こっている場合も少なくない。しかし,相続人が意見を一つにしないと限定承認は利用できないのである。

 もう一つ限定承認の問題点は,費用と時間がかかるという点である。限定承認の手続きはけっこうややこしい。具体的には以下の通りである。

1 まず,相続人全員で家庭裁判所に限定承認申述申立をする。

2 限定承認者等は,限定承認をしたこと及び債権届出をするよう分かっている債権者等に通知し,さらに官報に公告をする。

3  一方で,限定承認者は,現金以外のすべての相続財産を競売又は家庭裁判所が選んだ鑑定人の評価に従い売却したりすることにより,現金化する。

4 その後,債権申出期間が満了した後、その現金の中から、債権者に対し、全額支払可能であれば全額を,全額の支払が不可能であれば,債権額の割合に応じて弁済をする。

 
 すべて終了させるまでに期間は最低でも1年程度はかかるし,事案が複雑であればそれ以上かかることも珍しくない。
 また,これらの手続きを弁護士に委任しないで行うのは困難であり,弁護士に委任した場合の弁護士費用などの諸費用も相当に必要になる(ケースバイケースだが最低でも50万,通常100万円以上だろう)。

 このように限定承認は時間と費用がかかる点でも使いづらい。もう少し簡易・迅速に進められるよう法改正が必要であろう。

 しかし,それでも,相続人全員の意見が一致するのであれば限定承認は積極的に利用すべき制度であると思う。
 万が一であっても多額の借金を相続することになってしまえば悲劇である。それは5年後に来るのかもしれないし,10年後に来るのかもしれない。一生,多額の借金の相続の可能性はついてまわる。そのような可能性があると思いながら一生を過ごすのは不安なものである。
 一方で限定承認をしてしまえば,そのときは,費用もかかるし面倒であっても,それ以降借金を相続する可能性については,一切心配しないでよいのだ。

 相続放棄をするならともかく,借金は心配だけど,後から請求がきたらそのときまた考えようという安易な考えで相続するのであれば,積極的に限定承認の利用を考えるべきである。
 もちろん本来であれば,生前に借金がないか本人にきちんと確認しておければ一番良いのだが・・・。
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posted by 内田清隆 at 10:25| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月04日

借金を相続しない方法1  

「親が亡くなったが,親に借金があるかもしれないので心配だ。どうしたらいい?」
 という相談を受ける場合は多い。
 特に問題となるのは,例えば親とほとんど交流がなく,親に借金があるのかどうか,よく分からないという場合だ。

 てっとりばやい方法は,相続放棄である。借金があるかどうかを調べなくても,相続放棄はできる。これをしてしまえば,後からどんなに借金が発見されても安心である。

 しかし,問題となるのは,相続放棄した場合には,借金も相続しないが,財産も相続できなくなるという点である。
 財産がなく,借金だけが問題となるのであれば相続放棄をすればよく,話は単純だ。
 しかし,財産があるにもかかわらず,借金が「あるかもしれない」という場合,どうすればよいかは非常に難しい。

 借金があると思われる金融機関に照会すれば,その金融機関における情報について回答を得ることはできる。
 弁護士会照会といった調査手続きを使えば,相当程度には,借金があるかどうかは予測できるだろう。
 しかし,残念ながら完全に調べる方法はない。友人の多額の借金の保証人になっていないかどうかなどは,調べるのは非常に困難だ。

 そのような場合に備えて,「限定承認」と呼ばれる手続きがある。
 限定承認をすれば,相続財産の額の限度で責任を負うことになる。
 つまり,相続財産ですべての借金を弁済できなければ,何の責任も負わないことになり,すべての借金を弁済できれば,残りを相続することになる。

 「そんな良い制度があるならば,何の心配もないなあ」と最初に相続の法律を勉強したときに思った。
 ところが,この「限定承認」という制度は意外と使いづらく,余り使われていないのである。
 そのあたり,次回詳しく説明しよう。
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posted by 内田清隆 at 12:59| Comment(0) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続

2010年07月01日

遺留分を奪う方法3−生前贈与

 遺留分を奪う方法として、
養子縁組 http://uchidasouzoku.sblo.jp/article/38478205.html
廃除 http://uchidasouzoku.sblo.jp/article/38645705.html
を紹介したが,手続きが一番簡単なのは生前贈与の方法である。

 要するに,生前に全財産を相続させたい相続人らに贈与してしまうのである。
 そうすれば、遺留分を奪いたい相続人,つまり1円たりとも相続させたくない相続人は、相続をしたくても、相続ができなくなる。

 そんな簡単に遺留分を奪えるの?と思うかもしれない。
 実は,この方法で遺留分を奪うことは,本来はできない。

 というのも,相続人に対する生前贈与(特別受益)は,遺留分算定の基礎となる財産に加えられてしまうからだ。
 そのため,相続人として子ABの2人がいた場合,
@Aに全財産1億円を相続させるという遺言を書いてBの遺留分を奪っても
AAに1億円を生前贈与しBの遺留分を奪っても,
不当に遺留分を侵害したとして,BはAに2500万円分の遺留分減殺請求をできることに変わりはないのだ。

 しかし,違いが二つある。

 一つは,生前贈与したかどうかは,もう一人の相続人には簡単には分からないということだ。
 相続人の一人に贈与したからといって,他の相続人にそれを伝えなければいけない義務はない。
 そうなると,土地などの分かりやすいものでなければ,実際には,その贈与の内容は,贈与を受けていない相続人は知りようがなくなるということも十分に考えられる。
 そうなれば,遺留分を侵害された者は,侵害されたことを証明することができなくなる。その結果,実際問題として,遺留分減殺請求はできなくなってしまうというわけだ。
(違法ではないが脱法的ではあるので,その点の注意がいる。)

 もう一つは,生前贈与した物は,遺留分算定にあたり相続時の時価で評価されるという点だ。
 例えば,2000万円の土地を生前贈与したところ,相続時に1億円にその土地の価格が上昇していたとしよう。その場合,遺留分算定にあたりその土地は1億円で計算されることになる。
 したがって,その場合には,多額の贈与をしたことになり,多額の遺留分減殺請求を受けることになる。

 一方で2000万円の絵画を生前贈与したとしても,相続時に100万円の価値になってしまっていれば,遺留分減殺請求を受けないということにもなりうる。

 相続時に何の値段が上がり,何の値段が下がるかは一般には予想できない。
 しかし,同族会社の株式など値段がコントロール可能なの物を用いて,生前贈与により,事実上遺留分を多く奪うことも可能になるであろう。


 また,贈与とは,少し異なるが,保険を利用する方法もある。全財産を保険に掛けてしまい,受取人を相続させたい相続人だけにしておくのだ。
 そうすれば,相続させたくない相続人は何も相続できなくなり,遺留分を奪ったのと同じ結果になる。
 保険金を受け取ることは,贈与(特別受益)には,原則ならないとされているため,この方法も有用だ。
(もっとも,最高裁の判例からすれば,金額によっては,遺留分減殺請求の対象になるので,絶対の方法ではない。)

 なお,いずれの方法であっても,贈与税や相続税も複雑に絡み合うので,注意が必要であることを忘れてはならない。
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posted by 内田清隆 at 08:12| Comment(1) | TrackBack(0) | よくあるご質問‐相続